『-one-』

零れた想い P78


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「あっ」

 陸が急に思い出したように声を出して手を伸ばして引き出しを探っている。

「なに?」

「左手出して」

「左手?」

 いーから!と急かされて麻衣は訳が分からないまま左手を顔の前に出した。

 陸が麻衣の手を掴むと手に持っていた指輪を薬指にはめた。

 麻衣はその指輪を見て泣きそうになる。

「もう外さないで」

「うん。ごめんね…」

「俺もごめん。離れたりして…辛い思いさせてごめん。もう離れないから、嫌だって言っても離さない」

「私も…もう離れたりしない。ずっと側にいるから」

 二人はどちらからともなく抱き合うとお互いの顔を見て微笑んだ。

「今すげぇ幸せ」

 陸が喜びに浸りながら麻衣の髪を手で梳かしていると麻衣が陸の顔を見上げた。

「ねぇ…陸…」

「どうしたの?」

 恥ずかしそうにモジモジとしている麻衣にトイレ?と聞くと麻衣は平手で陸を叩いた。

「明日の昼までここから出さないって言ってたくせに…」

 最初は何を言われているのか分からなかったけれど真っ赤な顔で俯いた麻衣を見て意味が分かった。

「うわぁ…」

「な、何よ…」

「今日の麻衣ちゃん超積極的!」

「もう!陸が素直になれって言ったんでしょ!」

「可愛い!めちゃめちゃ可愛い!!やっぱさっきの訂正、昼までじゃなくて明日の夜まで出さないから!」

 絶対無理っ!と逃げ出そうとする麻衣を掴まえた。

 二人の甘い甘い仲直りの夜はまだまだ続く…。

end

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