『-one-』

零れた想い P75


 抱き合いながらイチャイチャとキスを交わす甘い時間を壊すような気の抜けるような携帯の着信音が鳴った。

「陸、電話鳴ってるよ?」

「ほっとけばいいよ。んーッ、ちゅっ」

「誠さんじゃない?仕事さぼってるんだし」

 チッ…これからは電源切ってからエッチしよう。

 渋々麻衣の体から離れて脱ぎ捨てた服を探って携帯を取り出すと開いて画面を見て思わず固まった。

 麻衣は陸のその僅かな動きも見逃さなかった。

「どうしたの?出ないの?」

「いや、出るよ…」

 麻衣の顔をチラッと見ながら通話ボタンを押した。

「もしもし」

「陸くん?今日お店に出てないって聞いたから…」

「あ…うん」

 奈津美からだった。

 夕方の返事をしなくてはいけないよな。

 陸はベッドに腰掛けると起き上がった麻衣の手を握った。

 もしかしたらまたケンカになるかもしれない…。

 でも…もう隠し事はしたくなかった。

「陸くん?体の調子でも悪い?」

 電話の向こうから奈津美の心配そうな声が聞こえる。

 麻衣は…俺の方を見ないで俯いている。

「いや、違うんだ。あのさ…今日の話だけど」

「う、うん…」

 奈津美の声が強張るのを感じた。

「ごめんね。やっぱり他の女の子と同じようにしか見れない」

 麻衣の手がビクッと動いて離れようとするのを肩を引き寄せて俯く麻衣の顔を自分の胸に引き寄せた。

 大丈夫だよ、麻衣。

「どうしてもダメなの?」

 奈津美の縋るような声が聞こえた。

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