『-one-』

零れた想い P68


「意識がはっきりしてる間に麻衣に言っておきたい事があるんだけどね」

 上半身裸で押し倒しているこんな状況にも関わらず陸は敢えて真面目な顔で真面目な話をしようとしている。

「俺の前では自分の気持ち抑えないで」

 真剣な陸の眼差しが真っ直ぐ麻衣を見下ろしている。

「麻衣の気持ちに耐えられなくなる程弱くないし、それよりも全力で俺を想っててその方が俺は頑張れる」

「陸…ずっとそう思ってたの?」

 あぁ…この人もそうなんだ。

 この前聞いた両親の話を思い出した。

「俺はこんなに好きなのに麻衣は本当は俺の事そんなに好きじゃないんじゃないかって…不安だった」

 私の態度が陸を不安にさせてたんだ…。

 陸の為にって思ってた事だったのに。

「だから…今回俺の方も色々考えちゃって変な事言ったけど…」

 バツが悪そうに情けない顔をした陸に麻衣は首を横に振った。

「本当に愛してるから、麻衣も俺を信じて俺だけを愛してて?」

「本当にいいの?仕事行かないでって泣くかもしれないよ?」

「大丈夫だよ。麻衣覚えてないの?俺前に言ったよね…麻衣の不安は全部俺が取り除くって。」

 覚えてるよ…。

 付き合う時に陸が言ってくれたんだよね。

「だからもっと俺に頼って甘えろよ…な?」

「相変わらず歯の浮くセリフばっかり」

 麻衣は恥ずかしくて誤魔化すように笑うと陸がむっとしながら答えた。

「言わせてるのは誰だよ」

 麻衣は私のせい?と不思議な顔をしながら陸を見ている。

「この天然が…こんなに俺を夢中にさせておいて」

「私、以外に他に夢中になった人いない?」

「えっ?」

「今のなし!何でもない!何も聞かなかった事にして!」

 思わず口走った言葉に恥ずかしくなった麻衣は真っ赤な顔を両手で覆った。

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