『-one-』
零れた想い P64
今度は麻衣が陸の涙を指で拭うと麻衣がくしゃくしゃの泣き顔のまま笑った。
「男の子がこんなに泣いたら恥ずかしいよ?」
陸は照れたように笑いながら鼻をすすった。
二人は見つめ合ったまま動けずにいた。
ようやく側に戻ってこれた安堵感に包まれていた。
麻衣は陸の手を取るとそっと握った。
「出来たら仕事中も私の事…」
上手く言えなくて言葉に詰まった麻衣を促すように優しく手を握り返した。
「…ずっと想っててくれると嬉しい…」
控え目だけど麻衣の素直な気持ちに隠しきれない喜びが込み上げて来て頬が自然と緩む。
陸は麻衣の手を強く握ると自分の方へと引き寄せて胸に置いた。
「ココ…取り出して見せてあげたい。俺の心はいつも麻衣でいっぱいだよ」
手の平から陸の胸の鼓動が伝わってくる。
「陸…ドキドキしてるね」
麻衣は可笑しそうに笑った。
「当たり前でしょ。好きな子が触ってるんだよ?」
笑って言い返すと悪戯っぽい視線を麻衣に向けた。
「麻衣もドキドキしてる?」
麻衣は恥ずかしそうに小さく頷いた。
「ほんとに?」
探るような表情の陸に麻衣はすねた顔を向けた。
「確認してもいい?」
「えっ…?」
驚いているうちに陸の腕が麻衣の胸へと伸びた。
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