『-one-』

零れた想い P63


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「俺ってホスト失格だよなぁ」

 陸は笑いながらまた麻衣の唇に触れるだけの軽いキスをした。

 目の前にいる麻衣の事が本当に愛しくて仕方が無いという表情を浮かべている。

 麻衣は陸のキスと優しい表情に後押しされるように口を開いた。

「そばにいたくて」

「うん」

「ホストだって分かってる…」

「うん」

 泣きながらそれでも気持ちを伝えようとしてくれている麻衣を黙って見つめた。

「でも…ずっと陸の事独り占めしたいって」

 陸は言葉を噛みしめるように目を閉じて頷いた。

「大好きで…本当に大好きで、でも嫌われたくなくて言えなくて…」

 バカだなぁ…そんな事で俺が嫌うはずないのに。

 麻衣の気持ちを聞いて少し気持ちに余裕が生まれた。

「ずっと辛かった?」

 陸の問いかけに麻衣はこくんと頷いた。

 陸の頬を涙が伝った。

「ごめんね。辛い思いさせて…ホスト辞めて欲しいよね?」

 本当は何度もそう思った事はあるけど…麻衣は静かに首を横に振った。

「無理しなくていいんだよ。麻衣が辛いなら俺は…」

 もう一度首を横に振った。

「ホストしてる時の陸も好きだよ。だから辞めて欲しくない…」

「ごめん…ほんとにごめん…俺情けないよね、男のくせに…こんなに彼女が辛い思いしてるのに気付かなくて」

 ようやく分かった自分が情けなかった。

 今まで麻衣はずっと自分の気持ちを押し殺して俺の仕事を応援していただけなのに…。

 それを俺はずっと麻衣の愛情が足りないと勘違いしてたんだ。


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