『-one-』
ホストの素顔 P12
「あっ…」
麻衣は何か思い出しように声を出した。
「さっきの食事代払うね。いくらだった?」
麻衣が鞄から財布を出そうとすると陸が手を押さえた。
「好きな子に食事奢らせるつもりなんてないよ。ね?」
陸はそう言ってウインクすると今度は頬にキスをする。
キスのされっぱなしで頬にされるくらいじゃ驚かなくなっている自分に驚きながら麻衣はずっと引っ掛かっていた質問を陸にぶつけた。
「お店の時とは違うよね?」
そう…店内に居た時のセクシーな瞳も少し俺様な話し方も今日はまったく見ていない。
「麻衣はあーいうのが好みなの!?」
「そ、そうじゃないけど…ほら…今と全然違うから…」
すごい驚かれようにしどろもどろになった。
陸はフゥーンと二、三回頷くとニコッと笑った。
「麻衣?俺の前で他の男の事を考えてるのか?」
昨日の色っぽい瞳で見つめながらセクシーな声で囁いて細い指が髪を弄る。
(うわっ…なんか体にキタッ…)
腰の辺りにズンッと衝撃を感じながら全身が熱くなる。
「えっ…あ…、えーっと…あの…」
「麻衣ひどいっ!ムカツクッ!仕事用の俺にドキドキしてるじゃん!」
何て答えていいのか分からず困っていると陸が怒り始めた。
口を尖らせてまるで子供みたいだ。
麻衣はポカーンと口を開けた。
まさに予測不可能なアトラクション。
「麻衣は俺が店の客として口説いてると思ってるんでしょ?」
言われて麻衣は素直に頷いた。
陸はやっぱりねとため息を吐く。
「店の客として口説くなら朝の10時の待ち合わせはありえないでしょ。ホスト陸のイメージが壊れる」
(なんだそりゃ…)
ホストが10時から駅前で待ち合わせってのもありえないもんなのか?と首を傾げた。
「ねぇ!俺の事好きになる?」
「はぁっ!?何でそうやって話が飛ぶの!」
「ねぇ!俺の事嫌い?」
まさに連続技と言った感じで次から次へと繰り出される。
そしてチワワのように目をウルウルさせて見つめてくる。
(CMで見た事があるけど…実際に見ると結構…ヤバイ…)
「き、嫌いじゃないよ…」
とても嫌いなんて言葉口に出来なかった。
「ほんと?ほんとに!?すっげぇ嬉しいっ!!」
本当に嬉しそうに笑って力いっぱい抱きしめると額に何度もキスをする。
絆された。
今の麻衣にはまさにぴったりの言葉だった。
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