『-one-』
ホストの素顔 P11
「ホストは人を好きになったらいけないの?」
その言葉が胸の奥深くへと突き刺さった。
ホストが悪いわけじゃない事は分かっていた。
さっきの言葉がとても自分勝手な偏見で相手を傷つけるような言葉だっとことも。
「ごめんなさい…ひどい事言って…」
陸が悪いわけじゃない事は分かっている。
確かに無理矢理キスをされてカッとしていたのはあったけれどホストへの偏見ではなくて…。
過去の事ばかりが頭をよぎる。
「別にホストが嫌いとかじゃなくて…ただ口先だけの男の人が嫌いで…口先だけで適当な事言って心で何考えているのか分からないような人とは関わり合いたくない…から」
それが麻衣の本心だった。
人間顔で笑っても口で愛を囁いても心の中では何を考えているか分からない。
特に簡単に好きだと口にする男の人とは関わるのが嫌だった。
本当はこんなことを知り合ったばかりの相手に言うつもりはなかったのになぜだか話してしまった。
(何かを期待している?)
目の前にいる陸の顔を見た。
今も変わらず真っ直ぐに見つめてくる。
ここまで目を逸らさずに口先だけで愛を囁けるものなの?麻衣の心は戸惑いで揺れた。
「俺は心から麻衣が大好きだよ」
二度目の陸の告白。
その声はまったく揺らぐ事がなく自信さえ感じられて胸の奥がキュッと締め付けられた。
陸の手が伸びて麻衣の頬に触れた。
愛しい物に触れるような仕草で撫でるとゆっくりと顔を傾けた。
チュッ−
陸の唇が軽く麻衣の唇に触れた。
(エッ…)
キョトンとするともう一度唇が触れて離れる。
「だ、だから…何してんの!?」
今までの話の展開からどうしてこういう事になるのか麻衣には理解が出来なかった。
それにさっきとは違ってすごく優しいキス。
おまけに目が離せなくなるような可愛い笑顔。
「キスしたいもんっ!すっごい可愛い顔してるからキスしたいもんっ!」
(もん!?今…もんって言ったよね?)
まるで駄々っ子のように言いながらまた唇が奪われる。
こんな風にキスをされたのは初めてで見なくても顔が赤くなっているのが分かる。
陸はそんな私の顔を覗き込むとさらにニッコリした。
「可愛いー。早くエッチしたいっ」
「はぁ!?大人をからかわないでよ!」
麻衣は陸の頭を思いっきり叩いた。
それでも陸は笑っているだけでちっとも懲りている様子がない。
麻衣も真っ赤な顔で怒っても何の説得力もないだろうな…自分で呆れてしまった。
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