『-one-』
零れた想い P51
目の前には美味しそうなイタリアンが並んでいる。
でもほとんど手を付けずにいた。
食欲がないわけでもなかったけれど…何となく食べても美味しく感じない。
「ねっ、これ…この前陸くんに似合いそうなの」
向かい側に座っている奈津美は細長い箱をテーブルの上に置いた。
包みを開けて出て来たのはブランド物のネクタイだった。
「ありがとう、嬉しいよ。でも無理するなよ」
「もぅ!私の気持ちなんだから気にしないで、ね?」
俺が微笑むと照れたような笑顔を返してきた。
「ワインお代わりする?」
「あぁ…うん」
最近、奈津美ちゃんは俺の世話を焼きたがる。
この前は俺のマンションがどこなのか聞こうとして来た。
奈津美ちゃんの気持ちには気付いていたけど…気付かないフリをしている。
それも時間の問題かな…。
最近…こういう子ならずっと側に居られるのかもしれないなぁって思う。
同い年だし俺の事好きだって見ててすごい分かるし、色々悩まなくてもいいかもしれない。
「ねぇねぇ…周りの女の子みんな陸くん見てるね、やっぱり格好いいからだよ!」
急に奈津美に声を掛けられた陸は驚いたように顔を上げた。
「周りの男だって奈津美ちゃんの事見てるよ。この中で一番可愛いからだろ?」
「陸くんにそう言われたらすっごい嬉しいなぁ」
麻衣だったらこういう時…恥ずかしくて下向くんだよな。
それで俺が他の女の子からジロジロ見られると少しむくれるんだ。
陸は思い出すと嬉しそうに微笑んだ。
「こーんな格好いい人が彼氏だったらみんなに自慢しちゃうなぁ」
「そんな風に思ってくれるなんて嬉しいよ」
いよいよ今日あたりかもなぁ…だんだんそういう事を匂わせて来てるし…。
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