『-one-』
零れた想い P49
麻衣の瞳から涙が零れ落ちた。
「想いは言葉にしないと伝わらないの、だから竜ちゃんも私も自分の気持ちを素直に伝えた、好きも嫌いも全て正直にね」
「やっぱり二人はすごいなぁ…」
麻衣は頬を伝う涙を指で拭うと目の前に仲良さそうに寄り添っている両親を見て微笑んだ。
こんな風になりたいってあの日思ったのにもういまさら遅いんだよね。
「あんまり物分りの良い事ばかり言ってると陸くんに愛想を尽かされるわよ」
「……ッ」
痛いところを突かれて言葉に詰まった。
でも…ごめんね。
もう愛想尽かされちゃってると思う。
「愛してるなら愛してるって、側に居て欲しいならどこにも行かないで!って甘えちゃいなさい!」
美紀が力強く言うと麻衣は力なく首を横に降った。
「そんな事いえないよ…。陸に迷惑かけたくないし」
「あーぁ、俺と美紀の娘なのにどうしてこう可愛げがないのかねぇ、これじゃあ陸の奴も可哀想だな」
竜はがっかりした表情で部屋を出て行った。
「何あれ…可愛げがないって失礼な…」
麻衣はその態度に憤慨しながらブツブツ文句を言った。
「竜ちゃんの言った事、間違ってないと思うわよ?」
「えっ?お母ちゃんまで…そんな…私は陸より8歳も年上なのにそんな恥ずかしい事…言えないよ」
私はお母ちゃんとは違うし…。
それにお父ちゃんと陸は違うかもしれない。
お父ちゃんはお母ちゃんの全部を受け止めてあげられても、まだ若い陸にはそんな事無理かもしれない。
「年なんか関係ないでしょ?いくつになっても好きって思う気持ちは大切よ。」
優しい微笑を浮かべながら麻衣に語り掛けているが麻衣は母の目を見る事が出来ずに俯いていた。
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