『-one-』
零れた想い P47
「でも竜ちゃんが必ず引き止めてくれたから」
そりゃそうでしょうよ。
今でもあんなにベタ惚れなんだから。
「竜ちゃんも決まって同じ事言ってたかなぁ…」
昔を思い出すように目を閉じて嬉しそうに微笑んでいる。
「ホストの俺はみんなの物だけど、たとえ1分でも俺を独占していいのは美紀だけだよ」
お母ちゃんは年甲斐も無く頬を染めねがら嬉しそうに話している。
「たとえ俺よりいい男にさらわれても必ず連れ戻す。」
えっ?まだ続きがあるの?
美紀は両手を胸の前で合わせてうっとりした表情を浮かべている。
「何度だって美紀を迎えに行く、何度嫌われたって、また俺の事を愛してるって言わせてみせるって」
「はぁ…ごちそうさま」
完全にお母ちゃんの回想タイムになってしまっていたけど…。
それにしてもお父ちゃんって昔からそうだったんだ、よくそんなセリフ言えたり出来るね。
恥ずかしくないのかな…。
「で、その度にほだされちゃったわけ?」
麻衣が呆れたように笑いかけると美紀は困ったような表情を浮かべた。
「私も本当に別れたかったわけじゃなくて…何て言うか竜ちゃんの愛情を確認したかったて言うのかな?」
「は?愛情を確認する為に?」
お母ちゃんは気まずそうに目をそらしてしまった。
愛情を確認する為に別れ話をするなんて考えた事もなかった。
「他の女の子にだって言葉で口説いてるわけだから、私が特別だって言うなら…ねぇ?」
ねぇ?って同意を求められても答えようがないよ。
麻衣はため息を吐いた。
「お母ちゃん…それってただのヤキモチでしょ?ホストなんだから仕方が無いじゃない」
「あら、麻衣は物分りがいい事言うのね。」
「物分りがいいって…仕事なんだから仕方が無いでしょ。文句言ったってホスト辞めなくちゃ解決しないわけだし」
麻衣の言葉に少し考えるように目を伏せている、何と言ったらいいのか分からないというような感じだ。
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