『-one-』
零れた想い P46
麻衣は休暇を使って実家に帰っていた。
自分の荷物は身の回りの物だけまとめると美咲に預かってもらう事にした。
美咲は何も言わずに荷物を受取ると実家に帰ると言った麻衣を駅まで送って行った。
母は夜遅く着いたにも関わらず笑顔で迎え入れてくれた。
朝になって一睡も出来なかった麻衣がリビングへと下りて行くと、何も変わらない風景があって当たり前のように自分の居場所があった。
陸の側にいるのも当たり前だって思ってた…。
「おはよう、麻衣」
「おはよ…」
テーブルに用意された朝食。
でもとても食べる気が起きない。
お母ちゃんなにも聞かないんだね。
昨夜突然帰って来てなんかあったって分かってるはずなのに…。
お母ちゃんはいつも笑ってお父ちゃんの側にいても…
「ねぇ、お母ちゃん?」
「なーにー?」
自分の朝食を用意した美紀が麻衣に呼ばれて向い側に座った。
「お父ちゃんと別れたいって思った事ある?」
さすがに目を見開いて驚いた表情をしたが、すぐに柔らかいいつもの表情に戻った。
「数え切れないくらいあるわよ」
「えっ?そうなの?」
意外な返事に麻衣は驚いた。
喧嘩している所すらあまり見た事がないくらい仲の良い両親だった。
子供から見ても気持ち悪いくらいだったのに。
「だって恋人が女の子とベタベタしたら腹が立つじゃない!」
「ホストなんだからしょうがないでしょ」
「頭で分かってたってやっぱり気分悪いに変わりはないわけだし…」
麻衣は話を聞きながら呆気に取られていた。
ホストだから女の子と一緒にいるのは当たり前で、それを承知で付き合っているんだから受け入れるものだと思ってた。
「じゃあ…お母ちゃんが別れようって思ったとか?」
「そうよ?」
そんなあっさりと…。
「三ヶ月に一回は別れる!って言ってたかしら」
「はァ!?そんなに?」
そんなんでよく今までこれたのか不思議で仕方がない。
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