『-one-』

零れた想い P45


 陸はいつも麻衣が寝ていた場所を触った。

 何のぬくもりもなくて手に伝わるのは冷たいシーツの感触だけ。

 ベッドに横になろうとした時にベッドサイドに置いてある小さな箱が目に入った。

 これって…もしかして。

 見覚えのある箱に手を伸ばした。

 水色の箱の下にピンク色の便箋が置いてある。

 箱を持ち上げてその便箋を抜き取った。



陸へ


今までありがとう
そしてごめんなさい

陸の側には私が居て当たり前だとずっと思っていました。

でも…
本当に陸を支えてくれる人が現れたなら私は側にいる資格がありません

素敵な時間を一緒に過ごしてくれて
ありがとう

鍵はポストに入れておきます


麻衣



「…ぁ…うぅッ…」

 声にならなかった。

 震える手で水色の箱を開けるとあの日麻衣にはめてあげた指輪が入っていた。

 俺が生まれて初めて誰かの為に選んだ指輪。

 あの時、麻衣さえいればもう何もいらないと思えるくらい幸せを感じた。

 バカなのは俺だ。

 あんな事をしたくせに心のどこかで麻衣は許して部屋に居てくれてるんじゃないかって思ってた。

 何であんな事言ったんだろう。

 何で振り切ってでも麻衣の元へ駆けつけなかったんだろう。

 何で昨夜麻衣を追いかけなかったんだろう。

 もう遅いと分かっていても頭の中には後悔の2文字しか浮かばない。

 どんなに後悔してももう麻衣はどこにも居ないのに…。

 冷え切った部屋の中で自分のした愚かさを痛感した。


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