『-one-』

零れた想い P44


 陸は急いでマンションへと戻った。

 鍵を開ける時間さえももどかしく乱暴に扉を開けて部屋に飛びこんだ。

「麻衣ッ!」

 部屋に入って叫んだが部屋の中はシンと静まり返り真っ暗だった。

「麻衣?」

 嫌な予感がしながら陸はリビングの明かりを点けた。

 久し振りに帰って来た自分の部屋はキレイに片付けられていた。

 リビングのテーブルもダイニングのテーブルも…

 まるで生活感が感じられない。

 徐々に動悸が激しくなって来る。

 もう寝てるのかもしれないよな?

「麻衣…?」

 わずかに残る期待にすがるような気持ちで寝室のドアを開けた。

 真っ暗だ。

 手探りで電気を点ける。

 ホテルのようにキレイにセットされたベッドには麻衣の姿はなかった。

「嘘…だろ?」

 陸は震える手でクローゼットを開けた。

 あったはずの麻衣の服が無くなっている。

 化粧品もアクセサリーも鞄も…無くなっていた。

 ガランと空洞になっている。

 陸は立っていられずにベッドの端に腰掛けた。

 呆然とする頭で携帯を取り出すとリダイヤルを押す。

 しばらくしてもう何回も聞いたアナウンスが流れて来ると陸の手から携帯が滑り落ちた。


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