『-one-』

零れた想い P43


「麻衣ちゃんは健気だなぁ…内緒だったのか」

 優は笑いを噛み殺した。

 何でそういう肝心な事言わないんだよ!

「やっぱお前なんかにもったいねぇよ。」

「うるせぇよ。麻衣は俺の…ッ」

 俺のなんて言える立場じゃねぇじゃん…。

 陸は思わず下唇を噛みしめた。

 優は陸のわずかな表情の変化に気が付いた。

「んじゃ…もう一つ健気な麻衣ちゃんの内緒話」

 優がもったいつけながら切り出すのを見て陸は嫌そうな顔をした。

「早く言えよ…」

「家に帰って来た時くらい仕事を忘れて疲れを取ってあげられたら、陸も女の子ももっと楽しい時間を過ごせるかなって…私にはそれくらいしか出来ないし」

 優は麻衣のモノマネをしながら喋った。

「どうして…」

 陸は愕然とした。

 俺はとんだ思い違いをしていた?

「どうしていつも俺には言ってくれないんだよ。」

 口の中で呟いた。

 俺に隠れて俺の事を想ってたって伝わらないだろ。

 ちゃんと麻衣の中にある気持ち俺にぶつけてくれたらいいのに…。

 ずっとそうだったんだ。

 そんな麻衣の行動をずっともどかしく感じていたんだ。


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