『-one-』
零れた想い P42
「よぉ!久し振りだな」
陸が店に向って歩いていると正面から来た男が馴れ馴れしく声を掛けてきた。
陸はあからさまに嫌悪感をあらわにして返事もしなかった。
今、一番会いたくない男だ。
麻衣の見合い相手でホストで…元々はお前が原因なんだよ。
そう思ったら無性に腹が立ってきて、目の前の男を睨みつけた。
「麻衣ちゃんは元気にしてるか?」
白々しいな…
麻衣と会ってんだからそれくらい知ってんだろ。
「そっちのが詳しいんじゃねぇの?」
陸は睨みつけながら返事をした。
優は怖っと肩をすくめた。
「ほんとお前には勿体無いよな。」
そんな事俺だって十分分かってるよ。
麻衣にはきっともっといい男と居た方が…。
「ホストを彼氏にするだけじゃなくて応援してる女なんてなー。やっぱ俺にくれよ」
「えっ…?」
さっさっと立ち去ろうとしていたが優の口から出た言葉に思わず足を止めた。
麻衣は俺がホストなのが嫌なんじゃないのか?
「お前の体の事を考えて栄養の勉強と料理教室に通ってんだろ?」
勉強?教室?
俺の為に?
そんな話、一度も聞いてない。
「おい…麻衣がそう言ったのか?」
「お前知らなかったのか?」
陸に聞かれて優が意外そうな顔をした。
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