『-one-』
ホストの素顔 P10:side陸
手が震えていた。
麻衣の手を掴んで自分の胸に押し当てながら手が震えている事に気付いて格好悪い自分に情けなくなった。
それにどうしても抑えきれずに感情のまま無理矢理キスをして泣かせてしまった。
目の前にいる麻衣にどうしても気持ちが伝えたかった。
最悪のタイミングの告白。
“おまえホストだろ?”ともう一人の自分に笑われているような気がした。
「でも…陸はホストでしょ」
情けないと落ち込む陸に爆弾が落とされた。
想像もしていなかったセリフに顔が強張っていくのが分かる。
返す言葉が見つからなくて顔だけ上げて麻衣を見た。
目に涙を溜めて睨んでいる。
こんな時に不謹慎だと分かっていてもその涙目で睨んでいるその顔すら可愛いと思えてしまう。
(こんなに好きなのに…)
言いたい事はたくさんあった。
色んな言葉を伝えたいのに思うように言葉が出てこなくて困っていると麻衣の手も震えている事に気付いた。
(俺が怖いの?俺がホストだから?無理矢理キスしたから?)
嫌われたかもしれない…と思ったら体の奥から冷えていくような感じに襲われた。
泣きそうな気持ちを堪えながら麻衣をこれ以上怖がらせないように握り直す。
「ホストは人を好きになったらいけないの?」
その言葉に麻衣はハッとした表情を浮かべた。
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