『-one-』
零れた想い P41
息を切らした陸が約束の場所に姿を見せたのは麻衣が居なくなってから1時間が過ぎた頃だった。
辺りを見渡してみても麻衣の姿は見当たらない。
「そうだよな…待ってるわけないよな」
さっきから何度も携帯に電話していたけど電源が入っていないアナウンスが流れる。
「くそっ…俺は何やってんだよ!」
自分の情けなさに舌打ちをしてズルズルとその場にしゃがみ込んだ。
俺は何がしたかったんだよ。
俺が離れたいって言ったのに麻衣はこうやって俺とやり直そうとしていたのにな。
それを俺は…。
もしかたら俺…行きたくなかったのかもしれない。
本当に麻衣とやり直したかったらたとえ何があったって麻衣の事を一番に考えたはず。
「ごめんな、麻衣。俺がこんなんだから…」
麻衣…きっと今頃泣いてるよね。
いや…泣いてなんかないかもな。
こんな俺にもう愛想尽かしてんだろうな。
口ばっかりで結局麻衣の事傷つけてただけだったんだよ。
麻衣だって気が付いたかもしれない、ホストと普通に恋愛なんか出来ないんだって。
年下のホストの言う事なんて信用できないって…。
どうしたらいいのか分かんないよ。
陸はうな垂れたまま頭を抱え込んでいた。
どのくらいの時間そうしていたのか分からなかった。
「仕事…行くか」
陸は呟くと面倒くさそうに立ち上がった。
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