『-one-』

零れた想い P39


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 奈津美は陸が部屋を出て行くと体を起こした。

「陸くん…ごめんね。どうしても行って欲しくなかったの…」

 だって…あんな風に笑うとこ見た事ない。

 昨夜の携帯を手にした陸の顔を思い出していた。

 あの子だけが陸くんにあんな優しい表情にさせられるの?

 私だってこんなにお店に通って陸くんの近くに居たのに、私の前じゃお店の陸くんの顔しか見せてくれない。

 そう思ったら悔しくて…。


 陸が酔っ払って上着を脱いだ隙にこっそりポケットの中をメモを見つけた。

 彼女の名前は知らないけどたぶんこの人だって思った。

 二人が上手く行っていないこと気付いてたから陸くんが行かなければ二人は終わるかなって…。

「卑怯だって思うけど…」

 陸くんの事好きになっちゃったから…。

 少しは好意を抱いてくれているんじゃないかと感じている。

 だからね…。

 彼女とさえ別れてくれたら…。

 そんな風に思ったの。

 奈津美は陸の居なくなった部屋でぼんやりとしていた。

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