『-one-』

零れた想い P37


「じゃあ、俺はここで」

 奈津美のアパートに着いて玄関先まで送った。

「もう少し一緒に居てくれない…かな?」

 奈津美が不安そうな表情で陸を見上げた。

 でも…そろそろ戻らないと待ち合わせの時間に間に合わなくなるよな。

「でも…女の子の部屋に上がるわけにいかないだろ?」

 陸はもっともらしい理由を付けた。

「陸くんの事信用してるから…。それに一人だとまだ不安で…」

 また目に涙を浮かべている奈津美を見て陸は仕方なく頷いた。



「あんまり考え込まないで…少し眠った方がいいよ」

 時刻はすでに14時を回っている。

 そろそろ行かないとヤバイよな…。

 陸は時計を見ながら落ち着きのなくソワソワとした。

「もう死んじゃいたい…」

 奈津美が力なく呟いた。

「そんな言葉簡単に口にするなっ!」

 陸は大きな声で怒鳴ってしまった事をすぐに後悔した。

 奈津美はまた激しく泣き出してしまい陸は奈津美の肩を抱きしめるしかなかった。

「辛いことはいつまでも続かないから…」

 自分の言葉届いているのか分からないけれど、何とか落ち着かせようと色々と言葉を掛ける。

 落ち着いたと思ったらまた感情的になる奈津美をなだめているうちに約束の15時は過ぎていた。

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