『-one-』
零れた想い P35
まるで初めてのデートのような感覚。
眠れなくて落ち着かなくてそわそわして時間の経つのがいつもよりも遅く感じる。
服を選ぶのでさえ仕事よりも時間が掛かった。
俺…緊張してんのかな。
手の平が湿っているのに気付いて苦笑いを浮かべる。
約束の時間に遅れないようにと少し早めに出て時間を潰していた。
花…とか買ったら麻衣喜ぶかな?
喜ぶっていうより恥ずかしいって照れながら怒ったりしそうだな。
小さな花屋の前で立ち止まった陸が一人でニヤニヤしているのを通行人が好奇の視線を向けている。
ピロ、ピロピロッ〜
携帯の着信音で我に返った陸が携帯を取り出した。
麻衣かな?
だが画面に出ていたのは麻衣の名前ではなく奈津美だった。
「もしもし?」
「陸…くん…」
電話の向こうの奈津美は泣いているのか声が震えている。
「どうしたの?何かあった?」
「私…もう自信ない…グスッ…もう私なんか居ない方が」
「ねっ、落ち着いて?何があったか話して」
いつになく取り乱した奈津美の様子に陸は何度も呼びかける。
だが電話の向こうで泣いている奈津美相手では会話にもならない。
困ったなァ…。
陸は時計をチラッと見て時間を確認した。
まだ13時を少し過ぎたところだから…少しくらいなら大丈夫だよな。
「奈津美ちゃん、今どこ?」
陸は奈津美の今いる場所を聞き出すとすぐに向った。
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