『-one-』

零れた想い P34


 タクシーのライトがネオンのように流れる街の様子をカフェからぼんやりと見下ろしていた。

 ここが陸の働く場所。

 普通に生活していたらきっと出会えなかった二人が偶然だったのか会うべくして出会ったのか…。

 コンコン。

 ボンヤリとしているとテーブルを叩かれて顔を上げた。

「もぅ!店に行くなら教えてくれれば良かったのにっ!」

 いつもは冷静な美咲が珍しく息を切らしながら怒っている。

 麻衣が驚いてポカンと口を開けていると美咲は呆れながら麻衣の向かい側に座った。

「誠から連絡貰った時はほっんとにビックリしたんだから!」

 美咲の真剣な表情からそれが冗談じゃない事が伝わってくる。

「ん…ごめん」

 陸の店を出てからすぐ麻衣の携帯に美咲から連絡が入りこの店で待ってるようにと指示をされた。

「で…?陸くんとは仲直りしたの…?」

 美咲が心配そうな顔で恐る恐る聞いてきた。

 麻衣はそんな美咲の顔を見ると少し笑みを浮かべて静かに首を横に振った。

「ダメ…だったの?」

 美咲の顔が強張った。

「まだ分かんない。」

 そう言うと麻衣は携帯を置いてきた事待ち合わせをしてきた事を説明した。

「ハァ…。なんでそんな回りくどい事するの?好きなら好き、一緒に居たいって言えばいいじゃない」

「そうなんだけど…。もう一度初めの頃に戻って始めたいなって。あの時は陸が私を選んでくれたから…」

「だからってわざわざ…」

「あの時から陸しか居ないんだよってずっと陸だけなんだよって、今度は私が陸を待ちたいの」

 麻衣の表情はここ最近で一番穏やかで美咲は納得したように微笑んだ。

「あんた達ほんとバカだね」

「ほんとにね」

 麻衣と美咲は顔を見合わせながら笑った。

 ただ…麻衣の心の内ではどうしても不安が拭いきれずに居た。

 明日…陸があの場所へ来てくれなかったら…?。

 そんな考えても仕方がない事を心の中で何度も問いかけている事を笑顔の裏側に隠していた。


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