『-one-』

零れた想い P31


 麻衣が来たと告げられた時耳を疑った。

 でもフロアに麻衣の姿を現れて本当だと分かった途端、心臓が狂ったように動き始めた。

 この前の話の続きをしに来た?

 マンションを出て離れて考えたいと言ってかなりの時間が経っているから…。

 頭の中で色々と考えていたけれど。

「いらっしゃいませ」

 久しぶりに近くで麻衣を見た瞬間すべてがどこかへ消えた。

 頭の中が真っ白になった。
 
 痩せた…ね?

 服の袖から伸びた麻衣の手首は前よりずっと細くなってるような気がする。

 ちゃんと食べてる?

 ちゃんと眠れてる?

 きっちりと化粧している麻衣の顔はキレイだったけれど、顔色の悪さは隠しきれてない。
 
 沈黙が多いぎこちない会話が続いた。

「今も、誠さんのところ?」

「あ…うん」

「私…マンション出て行くから陸は…」

「いや…いいよ。誠さんの所だと仕事とか便利だし」

 帰って来てとは言ってくれないんだ。

 それともこの前の俺の言葉があるから言えないのかな…。

 ポツリポツリと麻衣が話をして俺が返事を返す。

 その繰り返しで一時間が過ぎた。

「チェックいい?今日は自分で払うから」

「え?…どうして?」

「ね?お願い」

 麻衣の支払いは俺がするって二人の間で決めた事なのに…。

 それって俺とはもう関係ないって事?


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