『-one-』

零れた想い P29


 陸がマンションを飛び出してから1ヶ月。


「いらっしゃいま…せ」

 金曜の夜、賑わうONEの扉が開いて立っていたのは麻衣だった。

「麻衣さん!?」

 奥から出て来た悠斗は驚きの表情を隠せなかった。

 麻衣さん…痩せました?

 久しぶりの麻衣の姿は悠斗の目から見ても痛々しいほどだった。

「久しぶり!元気だったー?」

 麻衣は明るく挨拶すると小さく手を振った。

 それでもいつも通り振舞おうとする麻衣を見た悠斗もいつもと同じように接しようと手を振り替えした。

「元気ですよ!麻衣さんは?」

「もちろん!」

 悠斗に明るく返したがどう見ても無理しているようにしか見えなかった。

「それで…今日は…」

「り…陸をお願い出来るかな?」

 麻衣の顔が一瞬だが辛そうに歪んだがすぐに笑顔に戻った。

「お久しぶりですね?」

「あ、誠さん。お…久しぶりです」

 後から現れた誠に麻衣は軽く会釈した。

「それじゃあ…席に案内しましょうか」

「あ、あの…」

 誠が麻衣の前に立ちエスコートするのを麻衣が声を掛けると立ち止まった。

「あ、あの…」

 何かを言いたそうにしている麻衣に誠と悠斗が不思議そうに顔を見合わせた。

「今日は…出来れば二人にしてもらえたら…」

「え…でもっ」

 悠斗は前に見た麻衣の辛そうな姿を思い出していた。

 あんな風にまた辛い思いをする為に来たんなら俺は…。

「分かりました」

 誠は悠斗の肩に手を置いて制した。

「で、でもっ…」

「悠斗、お客様の希望を叶えるのが俺たちの仕事だ」

 そう言われては何も言い返せずに渋々頷くしかなかった。

「ありがとうございます。それと…迷惑ばかりかけてごめんなさい」

 麻衣が頭を下げて謝るのを見た二人は何て声を掛けていいのか言葉が見つからなかった。


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