『-one-』

零れた想い P28


 誠や悠斗それに美咲も自分達はどうする事も出来ないと分かっていた。

 それでも二人の辛そうな顔を見ているとやり切れない気持ちで苛立ちさえ覚えた。


 ほんとに俺の頭痛のタネを作る奴らばっかだなぁ。

 部屋に戻った誠はベッドに寝転がって携帯を手にした。

「あー俺…」

「こんな時間に珍しいね。何か用?」

 数コールで電話に出たのは美咲、こいつも頭痛の種の一つなわけなんだけど…。

「可愛げねぇなぁ…。電話嬉しい(ハート)とか言えねぇの?」

「…用がないなら切るけど」

 ハイハイ…いつまで経ってもここから進まないのが目下のところ最大の悩みだよな。

 ベッドの中ではあんなに可愛いくせに…。

「もしもし?」

 電話から不機嫌そうな声が聞こえた。

「あ…悪ぃ。麻衣ちゃんの様子どぉ…?」

 誠はようやく本題を切り出した。

「変わらないわよ。心配させないように笑ってるのが余計に痛々しい」

 ったく何やってんだよ二人とも。

「陸くんは…?」

「アイツも最悪だな。仕事出来てんのが不思議なくらいだ」

「そう。見てるこっちが辛くなるわね」

 同感だな…。

 今まで何度もケンカなんかあっただろうに今回はただのケンカじゃないみたいだしな。

「あいつら…もうダメかもな」

「………」

 美咲は何も答えなかった。

 あんなに愛し合ってた二人だったのに…。

 美咲と誠の脳裏には幸せそうにしていた頃の二人の姿が蘇る。

「お互いまだ好きなくせに…どうして」

 美咲は悔しそうに呟いた。


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