『-one-』

零れた想い P27


「…ォィ、オイッ!」


 頬を叩かれている事に気付いて目を覚ました。

 部屋の中をぐるりと見渡した。

「はぁーッ…」

 大きく息を吐いて体を起こすとソファの背にもたれて起こした相手から水を受取る。

「またうなされてたぞ」

 陸の向かいに座った誠が心配そうな顔をしている。

 陸が誠のマンションに来てから2週間が過ぎていた。

「一体、何度目だよ…」

 うなされて誠に起こされたのは今が初めてではなくもう何度もあった。

「すんません…」

 陸は謝りながらベットリと汗を掻いた額をシャツの袖で拭った。

「別に俺はいいけど…お前マジで大丈夫か?」

 誠は陸に何も聞かなかった。

 麻衣ちゃんと何かあった事くらいは分かる。

 あの日は真っ青な顔をした麻衣ちゃんは悠斗に抱えられるようにして帰って行った。

 その次の日くらいから陸は眠っているとうなされる事が度々ある。

「大丈夫です…。」

 おいおい、大丈夫なわけないだろ…

 寝ながら涙を流している時もあるのに…。

「あんまり自分を追い詰めるなよ」

 誠はそれだけ言うと寝室へと戻って行った。

 陸はまたソファに体を沈めた。

 目を閉じるとさっき見た夢の光景が瞼の裏に映し出された。

 泣いている麻衣を追いかけても追いつかない。

「麻衣…泣いてるよなぁ」

 距離を置きたいなんて別れる時に使うセリフなのに…。

 麻衣は…俺に別れを告げられたと思っているんだろうか。

 自分で言ったのにその言葉にさえ後悔をしてしまう。

 考えるって一体何を考えるつもりだったんだよ。

 いつまでもはっきりしない自分の気持ちに苛立ちを感じた。


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