『-one-』

零れた想い P25


 あんな風にまるで別れの言葉みたいな事を簡単に口にする麻衣が許せなくて思わず叩いてしまった。

 でも…泣いていた麻衣を見て叩いた自分も許せず腹が立った。

 こんなつもりじゃなかったのに…

 こんなつもりじゃなかったのに…

 何がどうしてこうなってしまったんだろう…

 こんなに大好きなのに。

 一生一緒にいると誓い合ったはずだったのに。

 陸は部屋を飛び出してあてもなく歩いた。

 麻衣を叩いた手がいつまでもジンジンと痛んだ。

 頭の中に泣き顔の麻衣がチラついても今はとても部屋に戻る気にはなれなかった。




 麻衣は叩かれた頬を押さえたまま部屋の中で立ち尽くしていた。

 涙は勝手に流れ落ちて服を濡らしている。

 なんであんな事言っちゃったのかな…

 生活がすれ違っても会えない日が続いても心の奥で二人は繋がっているという自信があった。

 どうして不安に押しつぶされてしまったんだろう。

 大切に温めていた想いは全て零れ落ちて爆発したどろどろした物が心全体を覆い尽くしていた。


 お互いに眠れぬ夜を離れた場所で過ごしていた。

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