『-one-』

零れた想い P24


 よっぽどこの前のオフの日の事怒ってるんだな。

 陸はさっきまでの怒りはすっかり冷めて今はただ麻衣の機嫌を直してもらいたかった。

「麻衣?おいで抱っこしてあげる」

 陸は麻衣を抱きしめようと腕を広げて待った。

 麻衣はその言葉に耳も貸さずその場から動こうともしなかった。

「OLじゃ分からない悩みとやらをその人に聞いてもらったら?」

「…え?」

 自分の腕の中に来ないどころか冷め切ったような声が耳に届いた。

「私なんかよりもずっと楽しいんじゃないの?」

 言葉は次々と刃となって口から飛び出して行く。

「その人と居た方が陸にとってはいいのかもしれないね…」

「何それ…」

「同業同士の方が支えあえるんじゃない?」

「俺の事支えてくれるのは麻衣だろ?」

 陸は広げていた腕を下ろして麻衣の腕を掴んだ。

 何バカな事言ってんだよ。

 拗ねてんのは可愛いけどそこまでは言いすぎだろ?

「…分かんない。」

 分かんない?

「何で!ずっと俺の側にいるって言ったじゃん!」

 陸は叫ぶように言いながら俯いている麻衣の体を揺さぶった。

 陸にされるがままの麻衣の体がグラグラと揺れ、髪が顔に掛かっても麻衣は手で払いもしなかった。

「もう無理…なんじゃない?」

 麻衣は顔も上げずにボソボソと呟いた。

 麻衣の言葉に陸は呆然とした。

 一瞬何を言ってるのか理解出来ない程だった。

「無理って…どういう意味?」

 陸は頭のてっぺんからすーっと体が冷えていくのを感じた。

「ホストとOLじゃ違いすぎるんじゃない?」

「違いすぎるって…?」

「結婚とか無理…じゃない?」

「ふざけんなよっ!」

 バチンッ−

 乾いた音が響いた。

 陸の手が衝動的に麻衣の頬を打った。

 その時顔を上げた麻衣を見て涙を流している事に気付いたけれどもう遅かった…。

 泣いている麻衣を残して陸は部屋を飛び出した。

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