『-one-』
零れた想い P18
麻衣はONEの近くの喫茶店で一人で時間を潰していた。
昨夜…いや今朝になっても陸は帰って来なかった。
一緒に暮らすようになってからこんな事は初めてだった。
言いようもない不安が麻衣を襲っている。
本当は携帯に電話を掛けて色々聞きたい…でも仕事で女の子と一緒に居たら迷惑を掛ける。
必死にその衝動を抑えていた。
それでも…陸の顔を見て安心したい。
何でもないよっていつもみたいに笑って抱きしめてキスして欲しい。
麻衣はONEに向った。
陸の顔が見たいただそれだけだった。
店へ着くと店の陰に陸らしき後ろ姿が見えて店には入らずに細い路地へ進んだ。
その後ろ姿はやっぱり陸で麻衣は声を掛けようとしたが陸が一人じゃない事に気付くと身を隠した。
「ごめんね?」
「元気出たなら良かった」
麻衣の耳に二人の会話が聞こえてくる。
「うん…陸くんが一晩中付き合ってくれたから」
えっ?
麻衣の表情が凍りついた。
昨夜はあの子とずっと一緒に居たの?
「じゃあお礼は新しいボトルで…」
「さすがNo.1はお上手ですこと。じゃあ私仕事行くね」
「頑張れよ」
陸は奈津美の頭をポンポンと軽く叩いた。
奈津美は嬉しそうに笑って背を向けて歩いて行った。
一部始終を麻衣は息を殺して見つめていた。
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