『-one-』
零れた想い P16
もう…1時なんだけど…。
陸が出掛けてまだ帰って来ない。
麻衣は一人で静かなリビングに座っていた。
今日は久し振りにオフだった陸と顔を合わせる事が出来た。
この前お店に行った時に気になった女の子の事を尋ねてからすぐに後悔した。
陸は仕事で女の子の相手してるのにまるでその子と何かあるみたいな聞き方をしてしまった。
「気になる?」
まさかそんな言葉が返って来るなんて思わなかった。
仕事の事に口を出されて不快に思ったのかもしれない。
それ以上は聞けずに話を終わらそうと適当に言って誤魔化した。
いつもは私がお店に行くと心配するほど私のところにいるのにこの前はすぐにあの子の所へ行ってしまった。
だから…何かあるんじゃないかって疑った。
何かあるわけない。
陸はホストなんだから仕方がないって何度も自分に思い込ませていた。
話が終わると陸の携帯が鳴った。
陸は携帯を手に取るとチラッと麻衣の方を見てから寝室へ行き電話に出た。
麻衣は陸のその行動に傷ついた。
たとえ女の子からの電話でも麻衣に隠れてするような事は今までなかったのに…。
麻衣の中でドロドロしたものがじわじわと膨らんでいった。
数分で電話を終わらせた陸が寝室から出て来ると出かける格好をしていた。
「出掛けるの?」
「あぁ…うん、遅くなるかもしれないから先に寝てて」
陸はそう言うと出掛けて行った。
確かに遅くなるとは言っていたけど…
刻々と過ぎる時計を見ながら麻衣は陸の帰りを待った。
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