『-one-』

零れた想い P14


 悠斗が麻衣を席に案内して歩いているの見て陸は目を見張った。

 どうして…って顔合わせてないから心配になったんだろうな。

 用意してくれた食事も飲みすぎて食欲がないせいか全く手をつけていなかったし。

 陸の隣に居た奈津美は店に入って来た麻衣を見て驚いた。

 あの時みた女性だった。

 しかも陸は辛そうな顔をしてその女性を見つめている。

 奈津美は胸の奥がざわつくのを感じた。

 直ぐに麻衣が来た事を知らされると陸は奈津美にすぐに戻るよと言い、麻衣のテーブルへ向った。


「こんばんは」

 陸が来ると悠斗は気を利かせて席を外した。

 麻衣の顔見るのって何日振りだろう…陸は隣に座った麻衣を見て胸が締め付けられそうになる。

「最近忙しいの?食事してないみたいだし…」

 麻衣は心配そうな顔をして小声で陸に囁いた。

 なるべく他のお客さんに聞かれないようにと配慮している。

「あぁ…うん」

 普通に接しようとしているのに素っ気無い態度になってしまう。

 あの光景を思い出してしまってどうしても無理だ。

「あんまり飲みすぎないでね?」

「分かってる」

 麻衣は陸がいつもと様子が違う事に気がついていたけれど気付かないフリをしていた。

 よそよそしく私と目を合わせようとしない。

 本人は隠しているつもりだろうけど全く麻衣には通用しなかった。

「陸…今日は一緒に帰れるかな?」

 ここのところ話もしていないし触れ合ってもいない、麻衣は珍しく自分からそう切り出した。

「ごめん、今日もアフター入ってて…気をつけて帰れよ。えっと…今日忙しいんだ悠斗呼んで来るよ」

 陸はロクに麻衣と目を合わせずに他のテーブルへ行った。

 すぐに悠斗が麻衣の所へ来たが麻衣の視線は陸を追いかけていた。

 陸と奈津美が笑顔で会話をしている所を何も言わず眺めていた。

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