『-one-』

零れた想い P13


 麻衣は帰宅するとテーブルの上を見てため息を吐いた。

 これでもう四日目…今日も用意した食事に手を付けていない。

 家には帰って来ているはずなのに、食事には手を付けずにそのままになっている。

 どうしたのかな…また仕事でも忙しいのかな?

 最近帰りも遅いみたいで顔見てないし…。

 久し振りにお店に顔を出してみようかな…。

 麻衣はまたバッグを持つと陸の店へと向った。



「ほんと最近おかしくないっすか?」

「あぁ…まぁ、そうだな」

 ONEの店の奥では悠斗が後輩達に囲まれてひそひそと話をしていた。

 話題は陸の事ここ連日の泥酔状態に加えて毎日来るようになった奈津美という客。

 悠斗は何日か前に麻衣の名前を呟いていた陸の姿が頭から離れない。

 やっぱりあの二人何かあった?そう思わざるしかない。

 悠斗はフロアに目をやって陸と一緒にいる奈津美という客を見た。

 今日も相変わらず楽しそうに二人だけで話をしている。

 あの女が来た時は陸はヘルプを付けずに二人で過ごしている。

 まさか…麻衣さんと別れた?

 そんな考えが悠斗の頭をよぎった。

「悠斗さん、麻衣さんお見えになりました。」

 くそっ…何てタイミングなんだよ。

 悠斗は舌打ちしそうになりながら店の入り口へと急いだ。

「こんばんは、麻衣さん」

「こんばんは!」

 麻衣さんはいつもと同じように微笑みながら店の入り口に立っていた。

 特に変わった様子も元気がないって事もないみたいだ。

「お店に来るのは久し振りですね」

 麻衣を席に案内しようと一緒に歩き始めると一瞬麻衣の表情が曇るのが分かった。

「そうだね…。たまには来ないと悠斗くんに忘れられちゃうでしょ?」

 明るく振舞っているけれどやっぱり何かあったんだ…と悠斗は感じた。


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