『-one-』

零れた想い P6


 ガタンッ!バタンッ−

 陸は乱暴に冷蔵庫を閉めた。

「陸ってばそんなに私の事信用出来ないのー?」

 麻衣はすこし頬を膨らませて怒った顔をしていた。

「そうじゃないけど…」

 冷蔵庫にもたれてまだ不貞腐れた顔をしている。

 だって…他の男の前でもあんな風に笑ったりするなんてむかつくじゃんか。

 こんな気持ち口に出して言おうもんならホストのくせに…と笑われるに決まってる。

 でも俺にとっては麻衣は特別だし…やっぱりどんな相手でもあんな風に無防備に笑顔を向けないで欲しい。

 いつでも俺だけを見てて欲しいって思うのに。

 陸は目の前で首を傾げながら自分の顔を覗きこんでいる麻衣を見た。

「麻衣ー」

 陸は人差し指で自分の唇をトントンと触った。

 それを見た麻衣は少し笑ってしょうがないなぁって顔をしてキスをした。

「陸は心配しすぎなの。ほら、すぐにご飯の用意するから待ってて?」

 唇を離すと麻衣は笑って陸の背中を押してキッチンから追い出した。


「はぁ…ッ」

 陸がキッチンを出て行った後麻衣は小さくため息を吐いた。

 まさかこんなに怒るとは思わなかった…やっぱり言わない方が良いかもしれない。
 
 陸には話していない事が一つあった。

 昨夜のお礼にと麻衣は優と食事をする約束を無理矢理させられてしまっている。

 向こうは心配なら陸も連れてきていいとまで言ったけど…。

 この調子じゃとても言い出せない。

 また変に心配させちゃうだけだし今回は黙っておこうかな。

 そう陸の為だから…。

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