『-one-』
零れた想い P5
麻衣の話は友達の○○ちゃんの恋愛話とか、お店で出た料理とか他愛もない話が続いている。
どうしよう…もしかして麻衣とアイツってあれからも二人で会ったしてんの?
俺みたい年下のホストよりあういう男の方がいいのか?
麻衣は陸のそんな胸の内には気持ちには全く気付かずに話を続けていた。
「あっ…!」
急に思い出したように手をパンッと叩いて身を乗り出した。
「そう言えばね、昨日久し振りにすごい人に会ったよ!」
「へぇ…誰?」
陸は一瞬動揺したがそれを見せないように気をつけながら返事をした。
「前にお見合いしたホストの人!お店の場所が分からなくて迷ってたら急に声掛けられたの!」
ふぅん…店に送ってもらったんだ。
麻衣は説明を聞いて一緒に居た理由は分かったけれど陸の心は全く晴れる気配はない。
「ふぅん…そうなんだ。嬉しそうだね」
陸は不機嫌な態度を隠そうともせずにあからさまに嫌味な言い方をすると立ち上がった。
麻衣はそんな陸の後ろ姿を見て少しため息を吐いた。
冷蔵庫から水を取り出すとそのまま口を付けて飲み始めた。
「陸ー?」
麻衣が顔だけを出してキッチンを覗き込んでいる。
「もしかしてヤキモチですかー?」
麻衣は入り口に立つと陸の腕をつついて茶化した。
陸は手の甲でグイッと口を拭うと麻衣をキッと睨みつけた。
「ヤキモチ妬いて悪い?自分の彼女が他の男といたら誰だって気分悪いだろ?」
あまりの剣幕に麻衣は一瞬たじろいた。
「もう!たまたま会っただけなんだよ?」
たまたま会っただけ?
そういう問題じゃないじゃん!
麻衣は何で分からないかなぁ、麻衣は俺が他の女と歩いてる所見てもなんとも思わない?
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