『-one-』
ホストの素顔 P7
コースも料理が終わって残すはデザートだけになった。
聞こえるのは波の音。
気持ちのいい潮風。
開放的なテラスで海を見ながら美味しい食事。
向かい側にはいい男。
これで相手が彼氏なら最高のシチュエーションだと麻衣は思った。
「そうだ。コレ…返しておくね」
陸がテーブルの上に麻衣の携帯を置いた。
「ありがとう」
ようやく手元に戻って来た携帯を大事そうに受け取る。
少し携帯を撫でてパカッ開いた。
「はっ!?何のこれ!」
麻衣は開いた携帯を前に突き出した。
「あんな男より俺の方が格好いいに決まってる!」
そう言って口を尖らせている。
昨日まではお気に入りの韓国俳優が待ち受けになっていたのに今は目の前の人物に変わっている。
しかも極上の笑顔でカメラ目線。
(ちょっと可愛い…)
その顔にクラッと来て麻衣は携帯を弄る振りをして何度も写真を眺めた。
「俺の番号とメアドも登録しておいたよ。もちろん“0番”に。仕事中は電話は出れないけどメールはいつでもしてね!」
子供のようにニカッと笑う。
(一体…なに?)
確かに今目の前にいる陸は感じがいい。
だからと言って素直にすべてを受け入れられるほど麻衣は子供でも純情でもなかった。
昨夜の店での陸とのギャップに違和感と不信感を感じる。
「どういうつもり?」
不信感を顕わにして聞いた。
陸がジッと麻衣の顔を見つめ返す。
「どういうつもりでここまで連れて来たの?もしかしてカモにでもするつもり?」
真っ直ぐ陸の目を見つめたまま言った。
一瞬陸の顔が歪んだ。
(…少し言い過ぎた?)
「何歳か知らないけど私より年下でしょ?年上をからかって楽しいわけ?」
言い過ぎてるような気はしたけれどこの際だから全部言ってしまおうと思った。
けれど途中でデザートが運ばれて来て話は中断した。
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