『-one-』

ホストの素顔 P6


「何してんの。早く降りて?」

 先に降りた陸が助手席のドアを開けて待っている。

 男性にエスコートされて車を降りるのは初めてでどうしていいか分からない。

(やっぱりホストってこうだよね…)

 自分なんかにこういう事をされるのはくすぐったい。

「しょうがないなぁ。抱っこしてあげるからおいで!」

 陸が手を広げて待っている。

(また子ども扱い!?)

 確かに普通の車に比べて四駆は車高が高いけれどそこまで麻衣の身長は低いわけではなかった。

「そうやってバカにしてッ…」

 カッと来て車から降りようとしたら靴が滑った。

 慌てて掴まろうとしても体が落ちる方が早い。

「だから言ったでしょ?危ないなぁ」

 けど地面に尻餅つくことも車に頭もぶつける事もなく体は本日二度目の腕の中へ。

 陸は呆れた顔をして麻衣の顔を覗き込む。

 さすがに何も言い返せずに悔しそうに唇を噛んだ。

「ごめんなさいは?」

 それこそ本当に子供に言うみたいな話し方だった。

 麻衣はトンッと地上に下ろされてチラッと陸の顔を見た。

 少し真面目な顔でジッ見られていて麻衣は呟くように言った。

「…ごめんなさい」

「ん!」

 陸は頭をポンと叩くと麻衣の手を引いて歩き始めた。

「ご飯食べにここまで来たの?」

 海が目の前に広がる小さなレストラン。

 まだ夏まで少しあるせいかそんなに混んでいない。

「あんまり高いところだと困るんだけど…」

 こういうお店には入った事がなくて気後れしてしまう。

 色々と心配しているのに陸は気にせずにスタスタと店に入って行く。

「予約した中塚です」

「お待ちしておりました。こちらへ…」

(えぇ!?予約って…)

 店の人に連れられるまま奥へ奥へと進みテラス席へと案内された。

 エスコートされるままに椅子に座る。

「り、陸…ここは高いんじゃない?私お金あんまり持ってないから…」

 聞かれないようにコソコソと話しかける。

「麻衣そんなに緊張しなくても大丈夫だよ」

 大丈夫と言われても何が大丈夫なのかよく分からない。

 麻衣は落ち着きなくキョロキョロと辺りを見渡した。

「失礼します」

 すぐに色とりどりの野菜が乗った皿が目の前に置かれた。

(まだ注文してないんですけど…)

 麻衣はびっくりして陸の顔を見た。

「お腹空いたでしょ?」

 何でもない事のようにニコッと笑ってフォークを手渡された。

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