『-one-』
零れた想い P2
麻衣は男の手を払ってから上から下まで男の姿を観察した。
今までの人みたいにチャラチャラはしていないけど…。
高そうなスーツ、ブランド物のネクタイ、高級腕時計…そしてこの妙に馴れ馴れしい態度。
この人ホスト!
絶対ホスト!!
麻衣が確信した瞬間ようやく思い出したのか大きな声を上げた。
「あー!お見合いの人!ホストの!」
「やっと思い出してくれた?久しぶりーhoneyの優でーす」
あぁ…そうそう!
会社の社長からお願いされて一度だけお見合いした時の相手が何故かホストで…。
麻衣のころころと変わる表情を見ながら優は楽しんでいると、麻衣が怪訝な顔で優を見上げた。
「どうしてこんな所にいるんですか?」
「俺の店この先でしょ?それより麻衣ちゃんこそどうしてこんな所に?もしかして違うホストに乗り換えるの?それなら俺に…」
「乗り換えませんから!」
きっぱりと優の言葉をはねつけると麻衣は手に持っていた地図に視線を戻した。
「相変わらずベタ惚れってわけね…」
優は目の前の女が自分に見向きもしない事に少なからずショックを受けながらも、仕方がないか…と息を吐いた。
「でー?さっきから難しい顔して何覗き込んでるの?」
「あ…えっと、コレなんですけどね」
麻衣はもうお手上げだったので事情を説明して持っていた地図を優に見せた。
優は地図を少しの間覗き込んでいたが力強く頷くと顔を上げた。
「あーこの地図ちょっと違ってるよ。この店分かりにくい場所にあるんだ、もし良かったら俺がご案内しましょうか?」
優の申し出に麻衣は不信感丸出しの視線を送った。。
「その顔は何?さすがに俺も傷つくって、いつまでもこんな所ウロウロしてたら何度声掛けられるか分かんないよ?」
まぁ…確かにそうなんだよね。
異様に着飾った金髪や茶髪のお兄さんに声を掛けられるのにほとほとうんざりしていた麻衣は素直にその申し出を受け入れた。
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