『-one-』

ホストの素顔 P5


(…ん、あれ私…)

 頬に風が触れる感触に意識が戻って来る。

 ザザァッザザァッという音にぼんやりと目を開ける。

(ここ…は?それに…なんか唇が…)

 何か触れていたような気がして手で触れる。

 焦点の定まらなかった目はだんだんと視界をハッキリ映し始めた。

「海…?」

 目の前に広がる海にキョトンとする。

「やっと起きた」

(あ…)

 麻衣は思わずバツの悪そうな顔をした。

 陸がハンドルの上に顔を乗せてジロジロと見ている。

「可愛い寝顔だったよ」

 目をくりくりさせながら顔を近づけてニッと笑った。

 恥ずかしくて麻衣は目を泳がせた。

「あと30分経っても起きなかったら食べちゃったのに」

 麻衣は反射的に手で唇を覆った。

「プッ!やっぱり可愛いなぁ」

 ね?と陸が手を伸ばした。

 そして子供にするみたいに髪をくしゃくしゃと撫でる。

(もう…私をいくつだと思ってんの?)

 自分の童顔は認めているけれどさすがに目の前の陸よりは年上なはず。

 本当ならこんな手払いのけるのに…でもなぜか麻衣はされるがままになっていた。

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