『-one-』
ホストの素顔 P4
隣に座っている麻衣を見る。
助手席の窓に頭を付けて規則正しい寝息を立てている。
車を走らせて一時間くらい過ぎた頃静かになったと隣を見ると麻衣は夢の中だった。
それからしばらく走って目的地に着いて車を止めてもまだ寝ている。
(襲っちゃうぞ)
初めて見る寝顔が可愛くてもっと見たくなった陸はソッと髪をかけあげる。
「んっ…」
(あ…起きた?)
一瞬目を開けたように見えたがゴソゴソッと動くと頭が倒れてくる。
コテンと麻衣の頭が陸の腕に寄りかかる。
(反則だってば…)
その可愛い仕草に体が熱くなる。
(キスだけならいいかな)
寝ている女を襲うほど鬼畜でも欲求不満でもなかったが目の前で好きな女が無防備に寝顔を晒している。
陸はゴクッと喉を鳴らす。
ゆっくりと体を傾けた。
俯き気味の麻衣の唇に触れたくて少々無理な体勢で首を伸ばした。
唇が重なった。
まるで子供がするような軽く唇が触れるだけのキス。
たったそれだけなのに理性が飛びそうになって慌てて顔を上げる。
火照った顔を冷やすために窓を開けた。
少し湿った潮風と波の音が車内に流れ込んできた。
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