『-one-』
ホストの素顔 P3
薄れゆく意識の中で懐かしい記憶が蘇る。
車の中の微妙な距離感、会話の妨げにならない音楽、相手の事をよく知らない緊張感、そしてコントロール出来ない胸の鼓動。
前にも似たような事があった。
流れる景色をボンヤリと眺めながらいつのことだったか思い出す。
(あぁ…アイツと初めてドライブした時もこんな感じで…)
麻衣はウトウトと目を閉じた。
『麻衣ちゃん、車乗って!』
『え…でも…』
『何…俺が拉致るか心配なの?』
『そ…うじゃないけど…』
『警戒しないでよ。ちょっと麻衣ちゃんとドライブしながら話がしたいだけだよ』
『でも…』
『そんなに嫌ならまた今度にするよ。俺…麻衣ちゃんに嫌われたくないんだ…』
(それで乗っちゃったんだ…)
それで…車の中でキスをされて車を降りる時にアイツが手を握って離さなくて…。
『麻衣ちゃん、彼氏居ないなら俺と付き合って?』
『うん』
またキスされて車が見えなくなっても立ち空くしてたっけ。
(どうして…車…乗っちゃったのかなぁ)
麻衣は重くなる頭の中でぼんやりと考えていた。
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