『-one-』

ホストクラブ P6


 陸は何も言わずに服を脱ぎ始めた。

 麻衣は陸が全裸になってしまうと恥ずかしそうに視線を逸らした。

「早く脱いで」

「えっ…?あ…私は後から入るから…」

「自分で脱がないなら俺が脱がすよ」

 麻衣が返事するよりも早く陸は服に手を掛けるとすぐにスカートのホックを外して床に落とした。

 上着にも手を掛けている。

 本気だと分かった麻衣は自分で脱げるからと言って服に手を掛けると陸はすぐに浴室へと入って行った。

 麻衣は裸になるとタオルを手にした。

 持って入ったら怒るかな…。 

 タオルを置くと全裸で浴室の扉の前に立ったまま扉を開ける勇気が出ない。

 一緒にお風呂に入ったのはあの温泉旅行以来一度もなかった。

「何してんの?」

 中から声が響いて来て麻衣は覚悟を決めて扉を開けた。

 湯気で少し曇っていたおかげで恥ずかしさが少し減った。

「手、下ろして」

 入って来た麻衣を待ち受けていたのは陸の視線。

「で、でも…」

「麻衣?」

 低い声が響いて大人しく前を隠していた腕を体の横につける。

 陸は上から下までじっくりと眺めている。

 こんなの恥ずかしい。

 まるで目で愛撫しているかのような絡みつく視線に耐え切れずに麻衣は顔を横に向けた。

「おいで」

 ようやく陸の視線から解放されて麻衣は大きな浴槽の反対側に座った。

 離れて座る麻衣に近付いていくと足で麻衣の体を挟んで動けないようにした。

 二人の距離はそこまで近付いてはいない。

「で、どうだった?」

「な、何が?」

「今日の感想。うちとは違ってたでしょ?」

 陸は両手で泡をすくうとそのままふーっと息を吹いて麻衣の方へ飛ばしている。

「うん違った…テレビで見たのと同じだった」

「何して来たの?」

「どんぺりを美咲が入れてくれて…」

「あーコールしてもらったんだ?で…あの男が麻衣に付いたわけ?」

 あの男と言った時の陸は嫌な物でも思い出したように顔をしかめている。

「あ、うん…夕夜くんが…んっ」

 麻衣が男の名前を口にした途端、陸は強く引き寄せると唇を塞いで舌を割り入れると舌を絡めてすぐに顔を離した。

「他の男の名前なんて呼ぶな」

「楽しかった?」

「えっ…ううん、ONEの方が楽しかったよ!」

 ここぞとばかりに笑顔で返してきた麻衣を見ても陸は表情も変えない。

「そっか、電話に気付かない程楽しんだのかと思ってたよ」

「それは…ごめんなさい。」

 本当はもうそこまで怒ってないんだけどね…。

 陸は目の前でシュンとうなだれる麻衣を抱きしめたい衝動を抑え込んでいる。
 
 さっきまでは本当にムカついていたけれどホスト遊びがしたくて行ったんじゃないと分かれば十分だった。

 それでも無防備に男にキスされたりする麻衣へのお仕置きはしなくちゃな…。

「もう許して欲しい?」

 麻衣はうんうんと頷いてお許しを待っている。

「じゃあさ…俺の髪洗ってよ」

 陸は浴槽から出るとシャワーで泡を流して座った。

「髪洗ってくれたら許してあげるよ」

 そんな事でいいの?

 麻衣は喜んで浴槽から出るとシャワーを手にして泡を洗い流してから陸の後ろ側に膝立ちになった。

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