『-one-』

冬篭もり P9


 それからピザが届いたのは1時間後。

 陸が我慢できずに怒りながらキッチンへ向おうとした時チャイムが鳴った。

 陸は届いたピザをがっつくように3,4切れ口に放り込むとようやく空腹が収まったのか少し手を止めた。

 リビングのテーブルの上には二人分とは思えない量のピザがあった。

 飲み物を置くスペースも残ってない。

 ソファではなく床に座った陸は相変わらずというか当たり前というか…麻衣を自分の足の間に座らせて抱き抱えるようにして座っている。

「陸、食べにくい…」

「じゃあ食べさせてあげようか?」

 陸はピザを手に取ると麻衣の口元に近付けたけれど、麻衣に違うでしょと窘められてそのまま自分の口へと運んだ。

「毎日こうだといいのにー」

 陸はさっきからずっとこの調子、麻衣も実はこうやって陸とのんびり出来るのが嬉しかったりする。

 すれ違いの生活の二人がこうやってのんびりした時間を過ごせる事が少ないだけにお互いに貴重な時間を…と思っているのだけれど。

 陸はいつでもくっつきすぎなんだよね。

 麻衣は抱き抱えている陸を気にしながらピザを口に運んだ。

「もう雪止んだみたいだよ?」

 陸の言葉に麻衣が顔を上げて外を見ると、雲が切れて陽射しが差しているのが見える。

「ほんとだぁ。ねっ、後で出掛けない?」

「えー!やだっ!」

「どうしてぇー」

「今日は一日麻衣を抱っこする事に決めてんの!」

 いつそんな事決めたのよぉ…。
 
 陸の子供みたいな言い方に思わずため息が出てしまった。


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