『-one-』
冬篭もり P5
複雑な表情の麻衣とは対照的に陸は喜びを体を全体で表現して満面の笑みを浮かべている。
「あーぁ、折角着替えたのにぃ…」
雪の中を出勤するつもりで服を選んですっかりその気になっていた麻衣は自分の格好を見ながらため息を吐いた。
「そんな顔しないのー、休みになったんだったら…ね?」
陸は立ち上がり麻衣の背後に立った。
後ろから抱きしめて髪やこめかみにと何度もキスをする。
「そうだね!こんな事滅多にないし、せっかくだから大掃除でもしようっと」
思惑を打ち砕くような発言に不貞腐れながら張り切って動き出した麻衣の事を恨めしそうな顔で見た。
麻衣はいっつもそうやって俺の気持ちを無視するんだよなぁ…。
朝食の片づけを終えた後麻衣はキッチンを掃除しながら陸が居ない事に気が付いたあれから一時間が過ぎていた。
寝室へ覗きに行くとベッドの真ん中に丸くなって寝ている陸の姿を見つけた。
起こさないように気を付けながらクローゼットを開けて部屋着に着替え始めた。
「麻衣ちゃん、げっとぉ!!」
「きゃぁっ」
急に声がしたと思った次の瞬間には麻衣の体は宙に浮きそしてベッドの上に着地した。
「びっくりしたぁ!!」
陸に背中から抱えられて横向きに横たわった格好になっていたけれど、今の麻衣にはどんな表情をしているか簡単に想像出来た。
「油断大敵…だよ?」
まさにその言葉がぴったりだった。
今の麻衣は着替えの途中でちょうど上半身はブラ一枚という姿だった。
「もしかして起きてたの?」
「寝てたけど…麻衣が来たらレーダーが反応したいみたい」
何のレーダー何だか…と麻衣は笑ったけれど段々とそんな余裕がなくなってきている。
「チュッ、チュッ…」
麻衣を抱きしめてうなじや背中に何度もキスをしながらめくれた布団を体にかけると下も脱がせようと手を掛ける。
「陸ー?まだ朝だよ?」
「だって今日は仕事休みでしょ?」
陸は前に約束した事をちゃんと守ってくれている。
気分によってはおはようのキスが5分とか…ギリギリ許せる範囲なんだけどね。
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