『-one-』
冬篭もり P3
少しの沈黙の後、先に口を開いたのは陸だった。
「誰が乗せて行くの?」
陸の質問に麻衣は期待を込めた目で見つめ返すと陸はムッとした顔でベッドの中へと潜り込んだ。
「ほら、この前冬用のタイヤに交換したーって言ってたでしょ?」
つい一週間前にタイヤ交換した事を思い出して陸は布団の中でチッと小さく舌打ちをした。
「俺、まだ眠いし…」
麻衣が近付いて来てベッドに腰掛けたのが分かったけれど陸は気付かない振りをして目を閉じている。
麻衣もその事には気付いていたけれどこうなると陸は駄々っ子のように頑として譲らない事が分かっていた。
どうしようかと頭の中で考えをめぐらせている。
「じゃあ、車貸して?自分で運転して行こう!うん!」
麻衣は我ながら良い案を思いついたと手をパンッと合わせて立ち上がった。
「バカ言うなっ!」
陸は飛び跳ねるように起き上がると怒った顔をして麻衣の方を睨んだ。
あんな運転で雪道を運転するなんて自殺行為だ!
陸は麻衣の安易な考えに本当に腹を立てていた。
「タイヤ交換したから雪道でも平気なんでしょ?」
麻衣の言葉に陸は頭を抱えたくなった。
やっぱり麻衣には車の運転はさせるべきじゃない…というより免許自体持たせるべきじゃない。
大体どうやって免許を取ったのかも不思議なくらいだ…と心の中で文句を言っている。
「分かったよ、俺が送ってくから」
陸が諦めたように呟く。
麻衣は嬉しそうに陸の首に手を回して頬にキスをしてありがとと言って服を選ぶ続きをしている。
あーぁ、俺もとことん麻衣には甘いよなぁ。
陸は麻衣の後ろ姿を見ながら小さくため息を吐いた。
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