『-one-』

冬篭もり P2


 雪に触れようとする麻衣を陸は抱き上げて部屋の中へ連れ戻した。

 だが麻衣は窓に顔を近づけてまだ外を見ている。

「そう言えば昨日の天気予報で雪が降るかもって言ってたよねぇ」

「俺が帰って来る時にはもう降り始めてたよ」

 陸は毛布を体に巻きつけたまま暖房のスイッチを入れてテレビを点けてソファの上に丸くなって座った。

 朝の情報番組は朝から雪のニュースばかりをやっているようだ。

 麻衣は朝の支度をしようとキッチンへ向おうとすると再び陸の毛布の中へと引きずり込まれてしまった。

「部屋が暖かくなるまで大人しくして」

 ソファに座った陸は麻衣を抱え上げて毛布の中にしっかり包み込むとすっかり冷たくなってしまった麻衣の唇の自分の唇を重ねた。

 少しの間二人で楽しむように唇を合わせていたがテレビから聞こえてきたニュースに麻衣は驚いて顔を離した。

「えーどうしようっ!」

 テレビの画面には交通機関の情報を流している。

 この辺りの電車は全て始発から運転を見合わせているらしい。

「会社どうやって行こう!」

 画面を見ながらあたふたする麻衣を見て陸は呑気な声を出した。

「会社休んじゃえば?」

「そういう問題じゃないでしょ」

 言い返すと麻衣は毛布から抜け出して直ぐに仕事へ行く支度を始め出した。

 陸はそれを横目に見ながらチャンネルを変えていたがどこも雪のニュースで諦めたようにリモコンを置いた。

「電車動いてないのにどうやって行くのー?」

 バタバタと準備をしている麻衣に声を掛けたけれど返事がない。

 仕方なく毛布から抜け出すと音のする方へ歩いていく。

 寝室で麻衣が来て行く服をクローゼットの中から引っ張り出している最中だった。

「電車動いてないんだよ。歩いて行く気?」

 麻衣ならやりかねないな…と内心思いながら陸はそう言うとさすがに麻衣の手が止まって陸を振り返った。

「車なら行けるんじゃない?」


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