『-one-』

冬篭もり P1


 いつものように携帯のアラームが鳴る前に目が覚めた。

 隣で気持ち良さそうに眠っている彼を起こさないようにそっとベッドから出ると寒さでブルッと体が震える。

 いつもよりも今日は寒いのかな?

 ベッドの脇に掛けてあった上着を羽織ってから新聞を取りに行く為に玄関を開けると冬の冷たい冷気がスーッと部屋の中へ流れ込んできて慌てて扉を閉める。

「ほんとに寒い…」

 独り言を呟きながらリビングへ向いカーテンを開けて窓から外を眺めた。

「…嘘っ」

 麻衣の目の前にはいつもの見慣れた景色ではなく一面真っ白で街中が雪に覆われている。

 いつもならもっと明るくなっている空もいつもより暗くどんよりとした雲で覆われていて薄暗く、空からは真っ白な雪がどんどん落ちて来る。

「嘘ぉ…雪?雪だー!」

 その光景に思わず窓を開けてベランダへと出た。

 キーンと張り詰めたような冷たい空気が木も屋根も道路も真っ白に覆いつくされている光景をもっと神秘的にしている。

 麻衣は寒さも忘れてベランダに積もった雪に手を伸ばして触れながら久しぶりの雪の感触を楽しんでいる。

「こぉら、風邪引いちゃうぞ」

 部屋の中から声がして振り返った。

 体に毛布を巻きつけた陸が顔をしかめて寒そうに立っている。

「だって…雪…」

 麻衣は手の上に雪を乗せると陸に見せるように差し出した。

 だが陸はそんな事もお構いなしにその体を毛布で覆うように抱き寄せた。

「ほら、こんなに冷たくなってる」

 陸は抱き寄せた体がずっと冷たくなっている事に気付き力を入れて抱きしめると麻衣の顔に頬を摺り寄せる。

「もう5センチくらい積もってるよねぇ」

 陸の心配をよそに麻衣はその高さを測ろうと手を伸ばそうと毛布の隙間から手を出そうとしたが陸の手に阻まれた。


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