『-one-』

バカップル!? P5


 車を止めると相変わらずむくれたままの麻衣は飛び降りると大きな音を立ててドアを閉めて歩き出した。

「麻ー衣ちゃん?」

 歩き始めた麻衣の手を掴んで引っ張ると車の影にを引き込んだ。

 自分と車の間に麻衣を挟むようにして陸が立つ。

「怒った?」

 無言で睨みつけてくる麻衣の唇に軽くキスをする。

 まだむくれて尖らせている唇を舌でペロッ舐めてから顔を離す。

「ね、怒った?」

 もう一度聞いても無言のままの麻衣に陸はもう一度キスをする。

 今度はさっきよりも長く深くそのキスが終わる頃には麻衣の瞳は潤み手は陸の腰を掴んでいた。

 キスを終えた陸はそのまま麻衣から離れずに耳元でボソボソと囁く。

 麻衣は驚いた顔をしてすぐに真っ赤になった。

 その反応に満足した陸は麻衣の手を引いて歩き始める。

「楽しかったね!」

「楽しくありません」

 からかわれっぱなしで不機嫌な麻衣。

 それでも握られている手を振り払おうとしないことに陸は上機嫌になる。

「麻衣を抱っこして乗ったら筋トレになると思っただけだよ」

 さっきの陸の言葉。

 だいたい私を筋トレの道具にするなんて…っていうかあんな風に言われたら誰だって誤解するに決まってるじゃない。

「まーだ怒ってるんでしょ」

「怒ってるんじゃなくて、呆れてるんです」

 エレベーターに乗り込んで静かな密室の中で陸は空いている方の手で髪をいじって遊んでいる。

「子供みたいな事ばっかりして…」

「だって麻衣が可愛い反応ばっかりするんだもん」

 反省している様子のない陸に小さくため息をつく。

 エレベーターが止まると陸に手を引かれるまま歩いた。

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