『-one-』

チョコより甘い甘い君 P2


 はぁ…さすがに疲れる。

 陸は少し客足が途切れたタイミングで控え室へ戻って来た。

「おつかれっす」

 何人かのホストがのんびりとくつろいでいる。

「あー疲れた」

 陸はネクタイを緩めながらドサッと椅子に座り込んだ。

「すごいプレゼント責めっすよね。去年とかバレンタインなんか廃止しろーって騒いでませんでしたっけ」

 悠斗の言葉にみんなが笑った。

「いやー今年はいいもん見れたから気分いい」

 陸はまた麻衣のエプロン姿を思い出してニヤけた。

 クッキー焼いてるって言ってたよなぁ…帰ったら可愛くラッピングして置いてあるのかなぁ。

 もう心はそこへ飛んでしまっている。

「陸さん、顔、顔」

 悠斗に指摘されて顔を横に向けるとテーブルの上に置いてあるクッキーが目に入った。

「なにこれ、誰かの差し入れ?」

 箱にチョコチップの入ったクッキーが何枚も入っている。

「みんなへのバレンタインのプレゼント…だそうですよ?」

「ふーん、じゃあ俺も一つもーらい!」

 陸は一枚摘み上げると口の中へ放り込んだ。

「あっ、ウマイ!って誰から貰ったの?」

 陸は手を伸ばして二枚目を摘まむ。

 そこにいた全員がニヤニヤしながら自分の顔を見ているのに気が付いて怪訝な顔をした。

「なに…何だよ」

「いやーほんと今年はいいバレンタインで、俺はもう何もいらないっすね」

 悠斗の言葉になにか嫌な予感がした。

「もしかして…」

「えぇ…たぶん当たりですね」

 まさか…これって…。

 持っているクッキーに視線を落としてもう一度顔を上げるとニンマリと笑う悠斗と目が合った。

「麻衣さんの手作りいただきましたー!!」

 拍手と歓声が沸き起こった。

「ハァーーッ!?」

 陸の持っていたクッキーが二つに割れて床に落ちた。


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