『-one-』

チョコより甘い甘い君 P1


「もーぅ、そんなにジロジロ見ないでよー」

 麻衣は照れくさそうにしながら陸に声を掛けた。

 陸はというと…。

 さっきから甘い匂いが漂うキッチンの入り口に座り込んで麻衣を観察中。

 明日はバレンタインだからと麻衣がお菓子を作ってくれている。

 もちろん俺の為に決まってるでしょ?

「やっぱいいよねー」

 陸はこれ以上ないくらいにやけた顔付きで陸を見ている。

 可愛いなぁ…。

 今から仕事じゃなきゃこの場で押し倒したいなぁ。

「女の子がお菓子作ってる姿ってそそるー。でも、麻衣ー?」

 陸は難しい顔をしながら立ち上がると麻衣に近付いた。

「やっぱりエプロンは白のフリルが可愛いよ?」

 陸は茶色のエプロンを引っ張った。

「白なんて汚れが目立つでしょ?」

「あーもう分かってないなぁ!」

 陸は大袈裟に片手を振ってがっかりした顔をした。

 麻衣は陸の言いたい事が何となく予想ついてしまったのか嫌そうな顔をした。

「やっぱり白のフリルは男の憧れだって。ねー一回でいいから着てよー!もちろん裸にエプロン!」

「いーやーでーす!」

 麻衣の言葉に陸の頬がプーと膨れる。

「麻衣のケチッ!」

「はいはい、ケチでいいですよー。ほら仕事行かなくていいの?」

「麻衣が意地悪言うから今日は休む」

 ヘソを曲げた陸は冷蔵庫にもたれながら恨めしそうに麻衣を見た。

「バレンタインで忙しいんでしょ?」

「うーーっ!じゃあ麻衣も来てよ!イベントで来てくれた子にはホストから花をプレゼントってのやるんだよ」

「へー」

 麻衣の気のない返事に陸は口を尖らせる。

「麻衣だって俺から花欲しいでしょ?」

「ふーん、イベントじゃないとお花くれないんだ?」

 麻衣が意地悪な顔で陸の方を振り返ると陸は口を尖らせたまま言葉に詰まっている。

「仕事行って来る…」

 陸は拗ねた口調で呟いた。

「行ってらっしゃい。気をつけてね」

 麻衣が背伸びして陸にキスをすると陸は腰に手を回して抱き寄せて舌を掬うように絡めた。


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