『-one-』

チョコより甘い甘い君 P3


 仕事を終えて自宅に帰った陸は超不機嫌だった。

 予定ではテーブルの上にラッピングしてあるクッキーがあるはずだったのに何も置いてない。

 俺のバレンタイン…。

 ドスドスと足音を立てながら寝室へ向かった。

 麻衣はもうぐっすりと寝入っている。

「麻衣ー!麻ー衣ー!!」

 陸は大きな声で麻衣を呼びながら体を揺さぶった。

「…んん?」

 眠そうな顔の麻衣がうっすらと目を開けた。

 ぼんやりとする麻衣の視界に怒った顔の陸が映った。

「…陸?」

 乱暴に起こされた麻衣は不機嫌そうな顔をしながら起き上がった。

「麻衣ッ!なに!どーいうこと!」

「な…にが…?」

 寝起きの麻衣に構う事なく陸がすごい勢いで捲くし立てると麻衣は眉間に皺を寄せた。

「クッキー!」

「…ん?あぁ…クッキー、おいしかった?」

「おいしかった!…じゃなくてー!!俺の為に焼いたんじゃないの?」

 ベッドの上にあぐらをかいて座る陸がむくれた顔で麻衣の顔を覗きこんだ。

「…まだ3時。仕事あるから寝るよー」

 瞼が半分降りかけている麻衣がベッドに倒れこんで首まで布団を引っ張り上げた。

「ちょっと!まだ話終わってないッ!」

「んー…陸ぅ?もう寝かせて?」

 麻衣の瞼が完全に下りてしまった。

「ねぇ…麻衣ってば…」

 また寝入ってしまいそうな麻衣の肩を揺する陸の顔は今にも泣き出しそうになっている。

「んんっ…」

 それっきり麻衣が起きる気配はなくなった。

 やっぱりバレンタインなんか嫌いだ。

 陸の心中は大荒れだった。


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