『-one-』
子供なココロ大人なカラダ P8
「ほんとにごめんなさい」
暫くして顔を上げた陸は膝の上に顔を乗せてキッ睨む。
涙目で頬を膨らませ口を尖らせてまるで子供がいじけているみたい。
「惚れた方が負けなんだよ」
膝を抱えて顔を上げると独り言のように口の中でブツブツ呟いている。
「麻衣に謝られたら何でも許せちゃうだろ?」
「陸…」
「俺は今でも麻衣に嫌われたくなくて必死なの分かる?」
そんな風に思う必要ないのにプロポーズを受けて一緒に暮らしてるのにまだそんな不安を抱えているなんて…。
「ごめんね。この前は言いすぎちゃったね」
こうやって一緒に暮らしているのに陸は何一つ変わらない。
自分の気持ちを全てぶつけてくる所も一点の曇りもなく私の事を愛してくれる所も。
「麻衣、触れていい?」
聞く必要なんてないのに…。
陸が心配そうな顔で麻衣の顔色を伺っているのが分かると麻衣は自分から手を伸ばして頬に触れた。
「麻衣、抱きしめていい?」
何の迷いもなくすぐに頷く麻衣を陸は後ろから包むように抱きしめて肩の上に顔を乗せた。
あぁ…陸ってこんなに暖かいんだね。
久しぶりに陸の体温を背中で感じた麻衣は幸せな気持ちでいっぱいになった
二人は指を絡めて手を繋いだ。
「麻衣、大好き」
「うん」
「麻衣も好き?」
「うん」
不意に抱きしめられている手に力が入るとさっきよりも強く陸の方へと麻衣の体が抱き寄せられた。
「麻衣の口から聞かせて?」
さっきから陸の吐く息が髪にかかってくすぐったかっただけなのに今の低く甘く囁くような一言は全身をあっという間に駆け巡った。
「大好き」
麻衣の言葉に満足そうな陸が「うん」と返事をした。
お互いに黙り込むと普段気にならないような音がやけに大きく聞こえる。
それに陸の心臓の音…さっきからずっと陸の体温と一緒に私に伝わっていて自分の音も伝わってるのかと思ったらドキドキした。
「陸…」
「なぁに?」
何て優しくて甘い声を出すんだろう。
陸は惚れた方が負けなんて言うけれど私なんか陸に出会った時点で負けてるのにね。
「キスして?」
言ったそばから言うんじゃなかったと後悔する。
だってこんなに恥ずかしいなんて思わなかった。
全身の体温が急に上がったのを感じた麻衣は恥ずかしさで俯いた。
「可愛いね、こんなに赤くなって」
髪を掻き分けて首の後ろに陸の唇が押し付けられると自分の口から息が自然と漏れる。
言うんじゃなくて最初からこうすれば良かった。
麻衣は体を回すように捻ると陸の首に腕を回してそのまま陸の頭を自分の方へと引き寄せる。
「キスだけで終わらせる自信ないけど…それでもいい?」
もう唇が触れてもおかしくないほど顔を近づけているのに陸は遠慮がちに言うのを麻衣は返事の代わりにキスをした。
「麻衣、いいの?」
「したくないならいい」
「したい!すっごいしたい!今すぐしたいっ!」
叫ぶように言うと乱暴に唇を押し付けて強引に舌を中にねじ込んでくる。
ちょっと…いくら何でもいきなりこんな…。
驚いた麻衣は陸の体を押し返そうとするが陸の手は麻衣の髪の中に手を入れて逃げられないように引き寄せている。
「んっ…んんっ…」
唇の端から唾液が零れ落ちるのも気にせず舌を絡めるうちに麻衣も陸の頭を抱き寄せもっと深くと陸の舌を受け入れた。
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